統合失調症になるまで
2014年2月14日。この日まで、私は名古屋の百貨店で、2年11ケ月働いていた。まさかこれが休職する日になるとは、この時までは全く思ってもいなかった。
1月下旬から、先輩2人と後輩2人が異動となり、事実上店長・副店長の次の立場となった。入社して3年目の私には、とても負担がかかった。私は、連日、日中の接客に加え、退勤処理後に商品発注の見直し、2月12日は朝7時半から働き、退勤後、他店への商品移動を済ませ、職場に戻ってきたのは午後8時半過ぎで、それから職場用のバレンタインチョコの用意をなんとか終わらせた。休職することになる日の朝、出勤前より吐き気がしたが、朝礼で言えず、朝礼後、店長へ個別に報告した。
「吐いたり熱はないのですが、気持ち悪いです。でも頑張ります。」
「なら前に立って。」
と、強い口調で言われた。この頃の店長は、よくイライラしていた。私は、店頭に立つと、涙が出そうになり、裏へ下がると、大きくめまいが2回して、座り込み、顔がしびれ出し、涙が止まらず、立つ力もなく泣いていた。
しばらくして、店長が、
「昨日夜遅くまで遊んでたんやろ。昨日は出かけとったんか。今日忙しいことくらいわかるやんな。そこでおられても邪魔やから、帰って。」
と言われた。自分でも今日は働けないと思い、そのまま出勤してすぐ早退することになった。
やっとの思いで、更衣室に着き、しばらく着替えることも出来ずに、ワンワン泣いていた。なんとか着替え終わったころ、
「ノロかどうか今日中に早めに病院に行って、早く報告して。」
と店長に言われた。その後、報告するまで何度も携帯電話に連絡が入り、さらに心は参っていた。
自分が、風邪でもノロウイルスでもインフルエンザでもないと思ったが、明日も出勤できる自信がなかった。精神安定剤でももらおうと思って、精神科に行くことにした。
医師には、入社してから1年目・2年目は楽しく仕事をしていたこと、入社3年目の夏ごろからやる気がなくなり、人混みが嫌になったということなどを説明して、でもまだ働きたいから薬が欲しいと言った。先生からは、
「軽症うつ病だから1ヶ月休職したら?」
と言われた。
「私は心が弱いのですか?」
と質問すると、そうではなくて、前は店長と接することに適応できていたのが、心が弱っているところに、ストレスがかかって適応できなくなったのだと言われた。診断書を隠して働くことはできるか尋ねると、
「してもいいけど、明日からまたつらい思いするよ。できないでしょ?記憶力も低下しているはずだよ。」
と言われた。先生のおっしゃる通り、やる気もなくなっていたし、朝起きるのもつらく、前より忘れっぽくなっていることに気づいた。
仕事をする自信がなくて、親に相談して休職することに決めた。その後も家でずーっと泣いていた。
次の日はたまたま休日だったので、そのまま休むことになり、店長へ休職をお願いしに行った。店長に会って真っ先に、店長が私をにらみながら
「休めることになって、喜んでない?」
と言われた。うつ病だから、休職しないといけないこと、もう働けない状態であることを理解してもらうのに、時間はかかったが、最終的に受け入れてくれた。
その次の日、実家に帰った。私は、今日が何日なのか、何曜日か、さっき何をしたかなど分からず、頭がボーっとするし、腰とふくらはぎがひどく痛むので、総合病院に行くことにした。
あまりにも1日のうちに今日が何日なのか分からなくなるし、濡れている干したばかりの洗濯物を着てしまったりするので、心配したが、MRIをとった結果、異常はなかった。しかし、頭に何か入っているみたいに、ボーっとする日が続いた。
それから数日後、店長から、
「ひどいことを言った。良くなかった。申し訳ない。体調不良者が続いたからだ、運が悪かった。」
と説明してもらえたが、それでも傷ついたし、上司じゃないと思った。
休職直前の頃の私は、定時過ぎての電話応対、商品移動、商品発注の仕事に苛立つようになり、集中力もなく、発注はどうしても適当にしか考えられなかった。同じミスを3~4回立て続けにしてしまったり、頼まれた事を忘れることが多く、電車や店内での人込みが本当に嫌で、接客も『買ってくれなくていいから帰って』と内心思うようになった。入社して2年目まで、そんなこと思ってもいなかったのに、人の発言全てにイライラした。金銭授受や接客のクレームがなかったのが奇跡的なくらい、いつも不安だった。家の中でも、誰かに侵入されるのではないかという不安から、夜電気とテレビをつけたままでないと眠れなかったり、朝起きるのが辛かった。
そして精神科の初診日。休職することとなった。傷病手当も障害認定日も年金も障害者手帳の取得も、この日が基準となった。今思うと、この日会社を辞めたりせず、在籍中に初診を受けていたことは、不幸中の幸いだった。
それは、障害年金を受け取る場合、障害基礎年金と障害厚生年金では、受け取る金額が大きく違ったからだ。
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